モジリ兄とヘミング

オレノグラフィティORENOGRAFFITI

区切りをつける

「オレノグラフィティとオマンキージェットシティのバンド対決が見てみたいですね。」

2005年の演劇ぶっく『小劇場俳優 名前の由来コーナー』の小さな吹き出しにこう書かれていた。
当時20歳の私はなんの楽器も弾けなかったし、オマンキーさん(ここで区切るのが正解かどうかはわからない)も、きっとそうであったと思う。 オマンキージェットシティさんは後に『オマンキー・ゴーズ・トゥ・ハリウッド』『オマンサタバサ』と改名し、最後には『高松泰治』という本名(?)に戻されたそうだ。
もちろん、オマンキーさんとのバンド対決は叶わなかった。
それから15年が経ち、令和になった今も私は「オレノグラフィティ」のままだ。

「どこで区切ればいいんですか?」
「なぜオレノグラフィティという名前にしたんですか?」

15年間、延べ100人近くに聞かれてきたのではなかろうか。
しかし残念ながら私は、この問に対する面白いオチを未だに持っておらず、

「どこで区切っても大丈夫です。」
「大した理由がないんですよ〜。」

と毎度、答えてしまう。
その度に、質問者の笑顔の中に若干のガッカリ成分が浮かぶのを私は見逃さない。
彼らの中のオレノグラフィティ像に届いていない。
つまり私は『オレノグラフィティ』という名前に15年間、負け続けているのだ。

いいよ。負けるならばいっそボロ負けしたらいいじゃない。
『オレノグラフィティ』という概念だけが、一人歩きしてくれればいい。
例えばこんな風に。

「実際に見たことはないが、どうやら凄まじいヤツらしいぞオレノグラフィティは。」
「漫画家のCLAMPみたいに『オレノ』『グラ』『フィティ』の三兄弟で仕事回してるとか。」
「母親には三人彼氏がいて、父親は60歳で再婚したらしいぞ。」

と、いわゆる都市伝説的存在に、私はなりたい。

とは言え可能ならば本名に戻す機会も、私は虎視眈々と狙っている。
その日には、市川染五郎さんが松本幸四郎さんの名前を襲名したように、
誰かに『オレノグラフィティ』をもらって欲しいものである。

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